公開整理をする

故小倉正史氏の蔵書やスライド・フィルム等資料を2019年に公開整理した記録

11/9 小倉正史さんと公開整理&交流会

TERATOTERA祭り2019」で開催した公開整理のご報告その1です。

 

現在は横浜方面にお住まいの高齢の小倉正史さんを、わざわざ三鷹までお呼びして公開整理を行いました。

またこの日は、東京都現代美術館の「あそびのじかん」展でお世話になった学芸員の小高日香里さんが公開整理にご出席くださいました。現代美術館での3か月間は殆ど作業に費やしてしまい、小高さんにもきちんと成果報告をすることができていませんでした。わざわざ出向いて報告を聞いていただき、大変有り難いことです。

現代美術館での私たちの公開整理は、次の3つを主軸にした活動でした。

  1. 小倉さんからお預かりした蔵書の精査と蔵書票の貼付け
  2. 小倉さんからお預かりしたフィルム・スライド類のデジタル化
  3. ミニイベント「井戸端会議」開催

 

 

公開整理の内容を説明する印刷物

公開整理の主な3つの活動

ひとまずはこれら3つの活動報告を行いました。

 

 私たちの公開整理は、次の段階に進んでいます。

そのあと少しずつ参加者が増えてきたところで、今度は2.のフィルム・スライド類をデジタル化したものを実際に皆様に見ていただきました。

デジタル化したものはとりあえず外付けHDに保存してあります。それらをプロジェクターで映写しながら、傍らのもう1台のPCではAirtableを開き、小倉さんや他の方々から提供される情報を入力していきます。この時やはり、ネット回線があるととても便利です。海外のアーティストや美術館名などの固有名詞を確認したり、過去と現在の比較など興味関心を広げ、深めることができます。

この日の成果として、ひとつは「次の段階の公開整理」の練習とパッケージ化をシミュレーションできたこと。現代美術館での活動では作業が中心でしたが、今回「TERATOTERA祭り2019」にイベントとして参加できたことで、皆様に成果報告をする機会をいただくことができました。

成果報告をしながら中身を見ていただくことで、知識や問題の共有ができます。また、もうひとつの成果としては公開整理の方法について今後の「面白い」アイデア交換ができたことです。

 

「面白い」は私たちの継続のために重要なテーマだと考えます。

例えば私はある日、小倉さんのこのフィルム・スライド類のデジタル化作業をしているときに、一風変わった写真群に目を留めました。各地の展覧会を撮影した他の写真と少し違って、それらの写真には何かの工場や会議室、大きなビルの外観です。人間の顔面を型取りした石膏像がたくさん写っていて、最初はジョージ・シーガルみたいな表現のアーティストのアトリエ?と思いましたが、どうもアートの匂いが希薄。

急に気になり始めて、手掛かりがないか写真を拡大拡大・・・。最終的に、会議室に貼ってあったポスターからシルク・ドゥ・ソレイユの工場ではないか?と推測して、裏をとる。と、こんなことがありました。

その話をして写真を小倉さんに見ていただいたところ、「当たり。」と一言。カナダ滞在のついでに行ったのだそうです。なんだか探偵ごっこみたいで、ちょっと楽しかったのでありました。

 

このアーカイブのにはひとつの特徴があって、それは私たちが「公開」に拘る理由でもあるのですが、フィルム・スライド類に一目でそれとわかる情報が付与されていない・小倉さんにしか分からない状態になっているのであります。また、小倉さんご自身が、「〇〇の写真」と記憶を辿れる以上の、膨大な量ということがあります。

でもそれを逆手にとって、

探偵ごっこ(検索ごっこ)をして仮説を立てる

↓↓↓↓

小倉さんに答え合わせをして、その写真にまつわる情報をヒアリングする

↓↓↓↓

その写真の情報をネットや文献で更に調査して発表する

こんなワークショップができるのではないか?というアイデアが生まれました。

小高さん、
現代美術館で来年、こんなワークショップをやらせていただけないでしょうか???

 

「東京じゃなくても、日本じゃなくても、様々なところに出かけて行って、このように公開整理やワークショップを続けるのは楽しそうだね。」と私たちチーム公開整理はもちろん、小倉さんからも前向きなご意見をいただくことができました。

 

またTERACCOさんからは「AIで写真の情報を特定するのはどうか」というご提案もいただきました。ごもっともであります!現代のAIの凄さを知りたい!ぜひ試してみたいところです。

でも興味や知識は自発的に「なんだろう?」と思って取り組まないと身につかないものであります。AIで写真の情報を特定することと、公開整理を行うことで参加者にもたらす影響や効果は少し目的意識が違うのかもしれないとも感じます。

機械的に情報を付与して(あまり苦労せずに)整理することと、「なんだろう?」の興味や様々な体験を人と共有しながら整理をするのでは、そのアーカイブに対する考え方や評価が結果的に違ってくるように思います。

個人的には、皆で「〇〇の展覧会」と結論を出した後、Airtable(データベース)上に展覧会の年代や場所、出品者などの基本情報をタグ付けしていく作業をAIがやってくれるといいなあと妄想しています。

 

TERATOTERA祭りをサポートするTERACCOには様々な職業の人がいらっしゃるので、お話をするのも大変楽しく、様々なアイデアをいただけるのが素晴らしいと実感しました!